メンバー紹介
准教授 |
佐藤 均 |
||||||||||||||||||
|
略歴
|
その他
所属学会:日本癌学会、日本分子生物学会、財団法人染色体学会(評議員)教育活動
大学院:システム病態医科学日本獣医畜産大学非常勤講師:遺伝子工学II
研究活動
細胞遺伝学的手法を基盤として、ゲノム染色体進化の過程を明らかにするとともに、ヒト染色体異常のメカニズムと疾患との関連性を明らかにしたい。(1)微小核細胞融合法を用いたがん抑制遺伝子スクリーニングにより移入したヒト染色体の造腫瘍性抑制効果を明らかにした(文献1)。のちに、肺非小細胞 癌を抑制する遺伝子としてTSLC1が11q23.2領域から単離された。(村上ら、Nature Genet., 2001)
(2) ヒトあるいはマウス、ラット、チャイニーズハムスター、シリアンハムスター、ネコなど実験動物を対象にして80以上の遺伝子を染色体上にマッピングし、遺伝子の連関性(synteny)が異種間ゲノムにおいて保存されていることを証明してきた(文献4)。
(3)ネコはリンパ腫、白血病が多くヒトの疾患モデル動物としてその解析が望まれていたがヒトのような染色体命名規約が整っておらず、1997年に提唱し た nomenclature(文献2)をもとにして部位特異的遺伝子マッピングを展開してきた。さらに、ネコ白血病ウイルスFeLVの染色体上の組み込み部 位についてFISH法とSouthern法によって同定した(文献5)。
(4)血液系腫瘍においては、ポジショナルクローニングによる特異的染色体転座の分子生物学的解析が進展したが、腫瘍発生機構が未だ明らかにされていない 腫瘍も多い。個々の症例(悪性リンパ腫)毎に、細胞遺伝学的手法(FISH法、CGH法)を用いたゲノム染色体全体の構造異常解析を基礎にして、多段階に わたる疾患に関与する病因遺伝子異常を明らかにし、関連する遺伝子の機能解析を進め、分子病態の解明に迫りたい(文献3)。
SKY法によるHMS24株染色体転座の解析
[文献]
- Satoh, H., Lamb, P.W., Dong, J.T., Everitt, J., Boreiko, C.,
Oshimura, M. and Barrett, J.C.: Suppression of tumorigenicity of A549
lung adenocarcinoma cells by human chromosomes 3 and 11 introduced via
microcell-mediated chromosome transfer. Mol. Carcinogenesis 7: 157-164
(1993).
- Cho, K.W., Youn, H.Y., Watari, T., Tsujimoto, H., Hasegawa, A. and
Satoh, H.: A proposed nomenclature of the domestic cat karyotype.
Cytogenet. Cell Genet. 79: 71-78 (1997).
- Tanaka, R., Satoh, H., Moriyama, M., Satoh, K., Morishita, Y.,
Yoshida, S., Watanabe, T., Nakamura, Y. and Mori, S.: Intronic U50
small nucleolar RNA(snoRNA) host gene of no protein-coding potential is
mapped at the chromosome breakpoint t(3;6)(q27;q15) of human B-cell
lymphoma. Genes to Cells 5:277-287 (2000).
- Satoh, H., Fujiwara, M., Fukami, T., Fukuhara, H. and Murakami, Y.:
Comparative assignments of the TSLC1 and TSLC1-like tumor suppressor
genes, TSLL1 and TSLL2, to rat chromosomes by fluorescence in situ
hybridization. Bull. Nippon Vet. Anim. Sci. Univ. 52: 24-28 (2003).
- Fujino, Y., Satoh, H., Hisasue, M., Masuda, K., Ohno, K. and
Tsujimoto, H. : Detection of the integrated feline leukemia viruses in
a cat lymphoid tumor cell line by fluorescence in situ hybridization.
J. Hered. 94: 251-255 (2003).
- Zhang, X., Soda, Y., Takahashi, K., Bai, Y., Mitsuru, A., Igura, K.,
Satoh, H., Yamagchi, S., Tani, K., Tojo, A. and Takahashi, T.:
Successful immortalization of mesenchymal progenitor cells derived from
human placenta and the differentiation abilities of immortalized cells.
Biochem. Biophy. Res. Commun. 351: 853-859 (2006).
- Tanaka-Fujita, R., Soeno, Y., Satoh, H., Nakamura, Y. and Mori, S.:
Human and mouse protein-noncoding snoRNA host genes with dissimilar
nucleotide sequences show chromosomal synteny. RNA 13: 811-816 (2007).
将来計画
霊長類を初めとしたほ乳類や実験動物の染色体進化やゲノム構造進化の研究、ヒト疾患原因遺伝子の同定とその病態解析を目標としている。細胞レベルで起こっ ている個々の事象については、遺伝子発現に伴うタンパク質の核内局在や細胞内動態の可視化による解析、特定の遺伝子発現に注目した複製タイミングや染色体 リモデリング機構の解析、染色体テロメア構造の維持や変化の解析をとおしてポストゲノム時代の染色体に関連した多様な問題を追求したい。教官からのメッセージ
自分が興味を持ったり疑問に感じた自然事象をまずなるべく正確に把握し(これはかなり難しいと思います)、「なぜ?」をとことん突きつめるために常に考え続けること(もっと難しい?)を、楽しいと感じられるようになれたら、生命科学研究者として第一歩でしょうか。